パパさんの夜は勉強だ

パパさんの夜

僕はいつものよう娘さんと散歩に出る予定だったが、娘さんはなかなかトイレから出てこない。しびれをきらしてソワソワしてるとパパさんが気づいてくれた。今晩はパパさんと一緒だ!この人は結構遠くまで一緒についてきてくれるから頼れる存在だ。

街の灯りが遠くに見える中、僕たちはいつものルーティーンをたどる。「ジン君!今日も快便だねぇ」
恐らく娘さんもスッキリしてる頃だろう。最近は缶詰の「角切りとろみタイプ」ってごはんのせいかな。良く出る。

草の匂いを嗅ぎながら、僕はふと立ち止まった。目の前には、大きな鹿が一頭、いや奥にも数頭。パパさんの頭につけてるライトの光で、反射した目が光る。こっちの見てるのが良く分かる。彼らは自由に生きているように見えるけれど、僕とは違う過酷な環境で生きている。僕は決められた時間にご飯をもらえるけど、彼らにはそんな保証はない。

パパさんがぼそりとつぶやく。「人間が環境破壊をして、彼らの住処が侵食されているんだ。食べ物がなければ、彼らは人里に下りてくるしかない。そうなると農作物に被害が出る。太陽光パネルなんて、環境破壊のそのものだよ。最近はクマの被害も増えている。これも全部、人間が引き起こした災いだ。」

難しい話だけど、僕にも何となくわかる。僕もパパさんも、そしてあの鹿も、同じ生き物。みんな仲良く生きていきたい。でも、パパさんは時々、近所の猟師さんから鹿肉をもらってきて、「うまいうまい」と言いながら食べている。僕も少しお裾分けしてもらう。確かにうまい。

そうこうしてたら、パパさんはリードを外し、僕を野に放った。自由に駆け回るこの時間が、やはり僕にとって一番の楽しみだ。最近イノシシは見てないなと思いながら、家路についた。帰ったらパパさんはお酒を飲みながらさっきの話の続きをしている。

「クマに襲われて食べられる人間、人間に捕まえられて(飼育されて)食べられる動物たち、そこに利権は必要ない。生きていくために必要最低限の営みがあるだけだ。お金に惑わされて環境破壊するほど愚かな行為はないし、人間のおごりだ。」

パパさんの話はいつも難しいけど、僕はただパパさんと一緒にいられることが嬉しい。
今晩は冷える。外の世界は厳しいかもしれないけれど、僕には家があって家族がいる。それが僕にとっての一番の幸せだ。ずっと続いてほしい。

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